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コルドバのメスキータとフラメンコ

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発祥の地というセビリアで、見ることができなかったフラメンコをコルドバで見た。スペインの民謡だ。歌と踊りと観客の合いの手は、民謡に欠かせない。

学生のころ、ユーレイルパスを使って乗ったスペイン国鉄3等席は満席。電車のデッキを占有していた乗客らが、カセットテープをかけ、何やら手拍子をとりながら歌っていたことを思い出す。今思えば、これがフラメンコだった。電車の中で長い時間を持て余している時、自然発生的に楽しんでいたのだ。

手拍子が止んだ時、乗客の一人に声をかけられた自分は、ハポンから来たと言ってウォークマンを自慢気にみせ、当時流行していたYMOのテクノミュージックを聞かせてあげた。「どうだ、これが世界で最先端の音楽だ」と胸を張って。

「おおー」と感心するような声が上がり、乗客らは、だまって聞き始めた。やがて、リズムをとろうと、だれかが手拍子を打ち始める。が、シンセサイザーの機械音は、人の手拍子を拒絶した。音は、まったくかみ合うことがない。

やがて、カセットは返され、再びフラメンコの手拍子が始まった。まるで何事もなかったかのように。

世界に通じると豪語したYMOの音楽の力なんて、しょせんこの程度なんだよな。「ごめんよ兄ちゃん。これは俺たちの音楽じゃない」ってことなんだろうが、日本そのものを否定されたように思えて萎えた。

さて、当夜のコルドバのフラメンコ会場は、ドイツ人らしき旅行者が多くて、なかなか盛り上がってゆかない。目の前に座った家族旅行者の子供は、眠気に耐えられなくて、うつらうつらしている。

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それでもステージ上では、熱演が続く。男性の踊り手が、激しくタップを踏みながら、きれいにターンを決めた。キレがあるダンス。情熱的な歌い手。扇情的な黒と赤のドレス。

ブラボーと叫んだ声が、オレンジの木が茂る中庭を抜け、シリウスに向かって小さく消えていった。

ま、シリウスがどこにあるかなんて、自分は知らないけどね。